ロバート・クレイス
- 2005/05/29
ロバート・クレイス『ホステージ』 -
6月に、ブルース・ウィリス主演で公開される映画『ホステージ』の原作。翻訳モノはほとんど読まないんで著者についてはよく知らないが、テレビの脚本家を経て作家デビュー、アンソニー賞やマカヴィティー賞、シェイマス賞を受賞するなど、高い評価を受けている人気作家で、日本でも有名な存在らしい。
本書の主人公、ジェフ・タリーは、かつてロス市警のSWATで交渉係として辣腕をふるっていたが、ある事件でのミスがトラウマとなって自信を失い、今は静かな田舎町で警察署長を務めていた。しかし、強盗事件を犯して逃亡した三人組が、管轄内のとある邸宅に逃げ込んで人質を取って立て篭もったことから、タリーは再び事件の矢面に立たされることになる。そして、その家が抱えていたある秘密のために、事件は思いもよらない波紋を呼ぶ。タリーの家族は何者かに誘拐され、現場には偽のFBIチームが乗り込み、予測不能の事態に拍車がかかる。タリーは、過去を断ち切ってこの状況を打破し、人質と家族を無事に助け出すことが出来るのか。
人質事件を扱ったミステリというと、捜査側と犯人との駆け引きがやはり読みどころになってくるわけだが、この作品ではそれだけに飽き足らず、交渉側の人間が家族を人質に取られるという設定を加えて様々な思惑を交錯させて、出し惜しみせずにサービス精神満点に捻りまくっている。
下巻に突入すると展開はさらに目まぐるしくなり、中でもクライマックスは圧巻。絶望的な状況に一縷の望み。そこに活路を見出そうとするタリーの決死の行動。一気に結末に向けて突っ走るスピード感はスリル満点。
冷静になって振り返ってみると、後半になるとタリーのトラウマが軽視されているような気がしたり(これはタリーが置かれている状況を考えればおかしくないようにも思う)、事件全体を覆う緊迫感がイマイチ出ていなかったような気もするし、矢継ぎ早にいろんなことが起こるが連鎖性に欠けているような気がするだとか、いろいろと気になるところもあるのだが、それでも一度読み始めたら止まらない面白さ。傑作。