朝倉卓弥『君の名残を』

2006/04/08

 『四日間の奇蹟』で、「このミステリーがすごい!」大賞を受賞してデビューした朝倉卓弥の受賞第一作。プロの作家を目指すに当たって、長年構想を温めていたという意欲作らしい。

 『平家物語』を下敷きに、現代の高校生が源平争乱期にタイム・スリップするSF要素や、独自の挿話、歴史的解釈を交えて綴る哀切な大河ドラマ。

 持ち前の丁寧な描写で、主要人物の生い立ちを細やかに語り、感情移入を高める。授業で得た曖昧な知識から、自分や愛する人たちがどのような歴史的帰結を迎えるのか、おぼろげに分かっていながらも、何とか歴史に逆らおうとする健気な奮闘が胸を打つ。

 ただし。物哀しくやるせないサイド・ストーリーの積み重ねは重厚で読み応えがあるんだけども、連鎖して効いてくるような壮大な感動がなかったのがちょっと残念だったかな。

≪ 東野圭吾『レイクサイド』(2006-03-23)
浅田次郎『椿山課長の七日間』(2006-06-25) ≫