ジェフリー・ディーヴァー『獣たちの庭園』

2005/12/30

 どんでん返し職人ジェフリー・ディーヴァーが、準備期間に二年を費やし満を持して放った歴史サスペンス。

 舞台は、ベルリン・オリンピックの開催が目前に迫った1936年7月。主人公は、ニューヨークで腕利きの殺し屋として仕事を遂行していたポール・シューマン。ターゲットを仕留めようとしたところを罠に嵌められ、囚われの身に。ムショ行きを覚悟したが、アメリカ軍から前科の抹消と報奨金1万ドルを餌に、取り引きが持ちかけられる。その条件とは、ナチの高官暗殺。大金を手に入れて人生をやり直すために、シューマンはアメリカのオリンピック選手団の同行記者として紛れ込み、ドイツ入国を果たす。厳重な警備を潜り抜け、シューマンはターゲットを始末することが出来るのか。

 さすがディーヴァー。どんでん返し職人と褒め称えられるだけあって、歴史的事実に虚構を盛り込み、予断を許さない緊迫感のある濃密なサスペンスを書き上げている。

 キャラの造形も上手い。シューマンは、殺し屋ではあるが、虐げられている弱者を見かけると放っておけずに後先考えずに手を貸してしまう優しい男。注意深く洞察力にも優れている。シューマンを追う警視、コールも切れ者。わずかな痕跡から鋭い推理でシューマンの動きを読み、きわどいところに追い詰める。ただ頭が良いだけじゃなく、ナチ側の人間でありながら政府については快く思っておらず、皮肉をこめた不満を口にしたり、機転の利いた嘘も方便で弱者を助けたりと、人情派でホッとするし、ほろっとする場面も演出する。

 様々な思惑や陰謀、智謀が複雑に入り込む。その中で裏切りがあったり、真の友情が芽生えて助け合ったり、熱情が燃え上がったりと、実に密度の濃い物語が展開される。ディーヴァーに求める要素すべてが贅沢に詰め込まれた傑作。

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