横山秀夫『半落ち』
- 2005/10/16
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一気読み。勿体無くてなかなか読み始められずにいたのだが、いざ取りかかってみたら休憩もとらずに一気にいってもうた。さすが横山秀夫。圧倒的なリーダビリティ。
妻を殺した。現職警察官、梶聡一郎が、アルツハイマーをわずらう妻を殺して自首した。しかし、自首してきたのは犯行から2日後だった。動機と経過は素直に話すが、空白の2日間の行動については一切を語らない。梶が完全に落ちないのは何故なのか。
複数の視点を通して描くことで、事件を多角的に語っている。この物語の語り部に選ばれたのは6人。刑事と検察官と新聞記者、弁護士と裁判官と刑務官。
梶が頑なにその秘密を守り抜こうとした空白の2日間の謎。その謎を巡って、真実を追究する捜査陣と丸く収めるために押さえつけてくる権力、個人と組織の衝突を通してそれぞれの立場と思いを鮮やかに描いている。
ちょっと裏のドロドロとした部分が多くて、読んでいて不快な気分になる描写もあるのだが、そこが逆にリアルで説得力があって、思い切り感情移入してずんずん読み進めてしまう。謎を早く解き明かして、もやもやした気持ちを晴らしたいという欲求と、もういいじゃないかそっとしておこうよという、相反する気持ちが同居する。
期待していたほど感動がこなかったことだけがただ残念。それでも、ミステリだのエンタテイメントだのを抜きにして、抜群に面白い小説だと思う。優しさとは、正義とは何なのか。正義を司る組織が、存在意義に恥じない機能が果たせているといえるのか。そんなことも考えさせられるメッセージ性も込められた、読み応え格別の一編。
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