藤原伊織『蚊トンボ白髭の冒険』
- 2005/05/30
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『テロリストのパラソル』で江戸川乱歩賞と直木賞をダブル受賞して、一躍脚光を浴び話題を掻っ攫った人気作家、藤原伊織が'02年に刊行したハードボイルド・ファンタジー。
この作品の主人公は、陸上競技への夢を断念し水道職人となった若者、倉沢達夫。ある日、奇妙な羽音が聞こえるようになったのが物語の始まり。やがて頭の中から声がするようになり、蚊トンボの白髭と名乗る。白髭のおかげで超人的な能力を得た達夫は、アパートの隣人を助けたことから、厄介な問題に巻き込まれていく。
妙ちきりんな設定にガッカリしてしまう人もいるかもしれないが、グイグイと読み手を引き込む語り口は健在。文章に品格があるというか機微に富んでいるというか、ごく普通のことを書いても唸ってしまうような上手さがあって、オマケに会話も洒落ていていちいち面白いし格好良い。
達夫のキャラも魅力的。ちょっと生意気なところもあるけど真っ直ぐで男気のある青年で好感が持てるし、どこかとぼけた味のある白髭とのコンビも絶妙。このふたりのやり取りを読んでるだけでもニヤけてしまうほど面白い。達夫を運命の男と信じて積極的に接近を図るヒロイン、真紀も情熱の赴くまま男を押し倒す爽快キャラ。強気で物怖じしない姿勢は気持ち良いし、迷惑そうな達夫とのやり取りがこれまた楽しい。
株が絡んだコン・ゲームの要素もあって、正直ちょっと難しい話もあるのだが、小難しいことを説明する時に、誰でもすぐに分かるような例を挙げて問題点を本質的に悟らせてくれる。これは、簡単そうでなかなか出来ることじゃないと思う。
しかもさらに、その上で、主人公が抱え込んでしまったトラブルに自らケジメをつけようとする様を、ハードボイルドとしか形容しようの無い熱さで紡いでゆく。その天晴れな生き様に、釘付けになること必至。さすがの傑作。
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